障害者放送協議会
著作権審議会マルチメディア小委員会複製検討班
意見聴取(障害者放送協議会事務局まとめ)

日時:1999年8月3日(火) 15:15より
場所:国立教育会館501会議室

参加者(順不同、敬称略):

著作権審議会マルチメディア小委員会複製検討班
座長、齋藤委員、佐藤委員、半田委員、

<文化庁著作権課>
吉田大輔課長、
岸本織江課長補佐、
尾崎史郎マルチメディア著作権室長、
越田崇夫マルチメディア企画係長、
塚本圭二マルチメディア著作権室集中管理係長、
籾井圭子法規係長、
池野浩幸事務官(マルチメディア著作権室集中管理係)

<障害者放送協議会>
河村宏(日本障害者リハビリテーション協会企画情報部長)
坂上譲二(全日本ろうあ連盟文化部長)
高岡正(全日本難聴者・中途失聴者団体連合会理事長
牧田克輔(日本盲人会連合情報部長)
宮澤豊宏(聴力障害者情報文化センター常務理事)
中博一(聴力障害者情報文化センター企画・制作課課長補佐)

<オブザーバー>
太田晴康(全国要約筆記問題研究会副会長)
金丸園美(日本障害者リハビリテーション協会)
原田潔(日本障害者リハビリテーション協会)

意見聴取内容(まとめ)

(財)全日本ろうあ連盟文化部長 坂上譲二 意見陳述 <要望書参照>
(社)全日本難聴者・中途失聴者団体連合会理事長 高岡正 意見陳述 <要望書および意見陳述原稿参照>
(福)聴力障害者情報文化センター常務理事 宮澤豊宏 意見陳述 <要望書および意見陳述原稿参照>


河村:
以上で、聴覚障害者に関わる3つの団体からの意見を終える。これからその他の障害に関する事項について述べたい。
近年は、加齢に伴い視聴覚重複障害などをもつ人が増えている。これらの人々は著作物の享受について制約を受けているが、これについては牧田さんから述べる。

牧田:
私は日本盲人会連合の立場で、以前視覚障害者団体に対して行われた著作権審議会のヒアリングにも参加した。今回の著作権法改正では、37条に何の変更もなかったが、われわれの要望は認められたと考えている。
視覚障害者について言えば、点字を理解する者はごく一部である。そこで、音声に関わる37条2項が問題になる。依然として公共図書館における音訳、点訳などの問題が残っている。時代の変化に対応し、障害者の情報アクセス権についても広く検討していただきたい。また、障害者の情報アクセス権について、広く検討する場を設けていただきたい。

河村:
これまで私どもは、それぞれの障害者団体の立場から意見を交換し、要望を取りまとめてきた。その要点は次のとおりである。マルチメディアのネットワーク技術の進歩は、情報のバリアをなくす大きなきっかけとなるが、審議会においては、著作権法1条の理念に立ち返って、利用者、著作権者の要望を調整しつつ、このような新しいニーズに対応できるよう検討を進めていただきたい。また、情報の利用者、障害をもつ委員が審議会に含まれていないので、これについても検討していただきたい。また、情報アクセスに関する障害者の多岐に渡る要求について、国内外の状況や、技術的な問題点も視野に入れながら、恒常的に審議していく場を設けていただきたいと考えている。以上をもって、説明を終わる。

座長(委員):

質問、意見があればどうぞ。

佐藤委員(委員):
細かいことであるが、高岡さんが言語聴覚士について述べられていたが、これについて質問したい。これは国家資格なのか。有資格者は何人ぐらいいるのか。

高岡:
昨年法律が制定され、今年の春に試験が行われた結果、5月には約4千人(4007人?)有資格者が生まれた。欧米では古くからある専門的な資格である。厚生省が所管省庁である。

齋藤委員(委員):
2つ質問したい。1つは、テレビ映像の解説について。NHKでも行われているが、著作権法の領域で問題になる点があれば、お話しいただきたい。
もう1つは、同一性保持権に関わる話が出たが、これについても、どういう問題が実例としてあったか、具体的にご紹介いただきたい。

牧田:
まず第1点についてお答えしたい。テレビの音声解説放送は、朝の連続ドラマ、英語の番組等で行われているが、現在はドラマが中心である。だが、ニュースなどリアルタイムのものには全く行われていない。例えばニュースで戦争の映像などが流れても、目が見えないと状況がまったく理解できないのである。現代の生活で、情報の中心はテレビであるので、視覚障害者であってもテレビを見ている。ある放送局が視覚障害者のためにテレビ放送の音声だけをラジオで流したところ、テレビ局から、音声だけ流すのはだめだと言われたという経緯がある。この辺を検討していただきたい。もちろん解説放送は経費がかかるが、何か足がかりがあればと思う。

河村:
第2点についてお答えしたい。1982年に、UNESCO、WIPOが合同でシンポジウムを行った。シンポジウムの冒頭に議題の整理が行われたが、当時アメリカで既に開始されていた字幕付与については、同一性保持権、翻案権に抵触する恐れがあるので、複製権に関わる点字と区別され、議題からはずされたという経緯がある。ところがその後、それが国際的合意であったのだという通説にされてしまった。シンポジウムの場では、映画の字幕のようなものをイメージしていたのだと思うが、それは現在行われている情報保障としての字幕とは大きく違うと思う。字幕のあり方、聴覚障害者のニーズについて知識もなく、そのような国際的通説を作ってしまったのである。

高岡:
そのほかに分かりやすい例を出すと、われわれは聞こえないから、字幕、手話で音を見る訳である。そもそも音声を、字幕、手話で表せば、声色、声の強さはとうてい表せず、同一ではあり得ない。それを同一性保持という考え方で縛れば、見るな聞くなということになり、結局人間性そのものを否定されているに等しい。それをご理解いただきたい。

坂上:
手話は、日本語とは別の言語である。手話と日本語は語彙が同一でないので、それで同一性保持ができるのか、という議論になっているようだが、手話は、英語など外国語と同じく別の言語であり、基本的語彙はそもそも異なるのだということをご理解いただきたい。

半田委員(委員):
牧田さんにお尋ねする。点字図書館等で視覚障害者に録音図書が提供されているが、現在の図書館数、著書数、利用数はどのくらいか。

牧田:
正確な数字は持っていないが、詳しい数字は後日提出したい。記憶でいうと、点字図書は、明治以降の蔵書数で約46万タイトル(注:全国視覚障害者情報提供施設協議会の平成9年度概況で蔵書数465,282タイトル/1,598,190冊)。テープは昭和30年代以降であるが、約37万タイトル(注:同上蔵書数370,315タイトル/2,262,594冊)で、歴史の浅さを考えれば点字を遙かに上回る数字である。それだけ音声が重要視されているわけである。全国に点字図書館は90箇所あり、一番大きいところでは、90万人の利用登録者がいる。現在では、CDによる録音図書も出ている。そのようなものを利用して社会参加と平等を目指している。

河村:
日本では、点字、音声が中心となっている。一方欧米では、E-Textの存在がある。これは、出版社の合意のもとに提供される、出版物の電子テキストである。日本の法律では何らこれに関する規定がない。欧米では法的根拠があり、しかも、視聴覚障害以外にも、肢体不自由、学習障害も含め、通常の印刷物が読めない人なら利用できると規定されている。このような新しい動向も考慮されたい。

座長(委員):
それでは、これで聴覚障害者関係団体のヒアリングを終了する。ご出席ありがとうございました。


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