文化庁著作権課との協議録

文化庁著作権課との協議録

1999年9月3日(金) 文部省1階5会議室

吉田:
先日はヒアリングにご協力いただき感謝する。
本日は、以前いただいた要望書に関連して、事務局としての立場で、8月27日に送付した質問事項を中心意見交換したい。
何らかの法改正措置を取るとすれば、12月までに成案を出す必要がある。少し事柄を分けて分野ごとに進めていくことも考えられる。その点についても意見交換したい。

河村:
本日は手話通訳が入るので、発言の前には手を挙げていただきたい。
3日の審議会について、情報保障のことで気が付いた点があった。ヒアリングに入る前の段階で、情報保障がなかったため、ヒアリングに移行する際にとまどった点があった。そのような実際面で気づいたことは、率直に申しあげていくので、日常の活動のなかからも留意いただければ幸いである。
まず自己紹介したい。

河村、牧田、田中、金丸、原田、吉田著作権課長、岸本同課長補佐、籾井同法規係長、山田同法規係、尾崎著作権課マルチメディア著作権室長、塚本同集中管理係長、池野同集中管理係、川畑、太田、坂上、中、井上

河村:
質問の回答ならびに今後の日程というご提案であったが、われわれは16団体から構成されており、質問事項が予想したより遅く送付されたので、協議の時間が取れなかった。
そこで、質問事項の回答は、今月中に文書で行いたい。私どもも、できれば年内に問題を整理するやりとりを続けるが、著作権の問題とそれ以外の問題の整理もしていきたい。また、著作権法の立法趣旨について、「もって文化の発展に寄与する」という部分が当然障害者を含む全ての人々の情報アクセスの保障を含むものと理解しているが、これを著作権法上に明記することについて文化庁、文部大臣はどう考えるか、そのようなことも議題にしたい。私どもの質問、疑問点もあるので、論点整理のために、文書回答と合わせて提案したい。
議論ばかりをいたずらに続けるつもりはないので、問題点を詰めながら、成果をあげていきたい。
私どもは、16団体で十分に議論したものを文書で提示することを基本とし、そのうえで議論を進め、論点を進めたい。そのうえで、合意点、不一致点が確認できるであろう。そのうえで、法改正に反映できる部分は反映していきたい。
この点についてはどうか。

吉田:
著作権法の立法趣旨であるが、「著作物の公正な利用に留意しつつ」という言葉があり、障害者の情報アクセスに関することはその辺に含まれていると考える。公正な利用には障害者のみならず様々な分野があり、障害者の情報アクセスの分野のみを取り上げて網羅的に書くことは難しいであろう。
著作権法が問題で情報アクセスが阻害されているのか、その他の問題が要因なのか、その整理は重要であり避けて通れないので十分検討したい。年内にまとめをするというのは結構だと思う。やってみなければ分からないが、法改正を目指すなら早め早めの対応は必要であろう。仮に権利者の権利を制限するということになると権利者への説得ということも必要となるので、年末では間に合わないとも思える。

河村:
本協議から派生して、権利者団体との意見交換の場を斡旋していただくことも可能であろうか。

吉田:
考えていきたい。

河村:
諸外国の動向とも密接な関わりがあるが、条文を入手することは簡単だが、各国語で書かれているので、翻訳が必要になってくる。可能であれば共同で、調査・情報収集し、資料を共有し、協力することはできるであろうか。

吉田:
各国の法令は入手できるか、それがどのように運営されているかは、残念ながら必ずしも十分な情報はない。双方で情報交換できれば、こちらとしてもありがたい。

河村:
入手はできるが、日本語に訳さなければ検討が難しいので、翻訳のための作業グループができるのであれば、双方が負担し、共同の翻訳した資料集をつくるということは可能であろうか。

吉田:
冊子という形にできるかどうかは、予算措置との関わりもあるので即答できない。双方の情報を交換するという点について賛同するので、進めていき、その後様子を見ながら可能なことをしていくということでどうか。

太田:
予算措置の話は別として、各国の資料がない限りは、検討もままならないので、諸外国の状況を相互に交換し検討していこうという合意がこの場で得られるのであれば、いいであろう。その後はその後で双方誠実に対応していく。

坂上:
国際法との関わりを無視できないということを、以前文化庁が述べていたが、であれば相互が研究し、相互が負担していくことは当然であろう。

河村:
共同作業をすることに異論はないので、まず、資料を持ち寄ることから始めていきたいと思う。英語のものなら処理しやすいが、北欧など英語以外のものについて、まず集まったものについて必要なものは翻訳していくため、その作業グループを双方の事務局が行っていく、ということでいいか。

吉田:
結構です。

河村:
今後の話し合いをどの程度の頻度で設けていくのか話し合いたい。
私どもの案は、27日付の質問に対する文書回答に、私どもの質問事項を加え、 あと2週間ぐらいで提出したい。そのあと、わたくしどもの質問に対する回答はまだでもいいので、 月末に第1回を設けてはどうか。 そのあと、2,3週間に1回程度、4,5回ぐらい話し合いを設ければ、論点は出尽くす。 年末にまとめを行う。

吉田:
9月20日ごろには回答がいただけるということか。

河村:
20日の週ということになろうか。それで、委員各位はいいか。

委員:
異議なし。

河村:
そのあと、1回目の協議を設定させていただく。27日の週にその協議というのではどうか。

吉田:
今決めてしまっていいか。

河村:
9月29日、18:30から2時間程度としたい。(仕事がある人がいるため。文化庁も時間外で問題ない。)

吉田:
2,3週間に1度という基本設定は異存ない。進めながら臨機応変にやっていけばいい。
特に点字、録音、字幕ビデオについては、ある程度問題認識をもっていたし、 時代に応じた対応ということとなるが、これまで考えていなかった情報提供手段について、 詳細を知りたいと思う。たとえば字幕RTなど。このあたりは十分ご配慮いただきたい。

太田:
情報を詳細に伝えていくということであれば、もちろんそのようにしたい。その当事者をこの席にオブザーバーなどで参加してもらっていいなら、現場の声が聞けると思う。

河村:
委員以外にも、その都度の問題に関して、関係の人を招き話を聞いていくのが実質的と思うがどうか。

吉田:
おっしゃるとおりであろう。わたくしどもも、現場を実際に見るということも考えている。見て差し支えないところがあれば、ご紹介いただきたい。

太田:
次回、デモンストレーションの時間を15〜20分設けさせていただきたいがどうか。

太田:
プレゼンは、実際どのような画面なのか、追体験ができるようにしたいと思う。

吉田:
そう願いたい。

河村:
その他、今後の話し合いの中で、分かりにくいものがあれば、相互理解を得るためにも、デモ、プレゼンのような形で紹介していきたい。

坂上:
手話による同時通訳について、どのような場面を想定しているのですか。(1-丸5)

岸本:
質問は、公演会などの手話通訳ということを想定しており、ビデオの字幕などではないということである。

吉田:
今やっている手話通訳のようなことである。

河村:
その他、質問の内容について明確にしておきたいことが、委員各位にあるか。

田中:
録音物をLD、老人にどう提供しているのかということであるが、現段階では、著作権法を守っていれば、不可能なことだと思われるが、どうお考えなのであろうか。(3-丸5)

吉田:
ご要望項目に認めてくださいとあったので、要望の実態について、どのような要望があるのかということを知りたいということである。

河村:
まず、現況では視覚障害者等以外には貸せないし、貸していないという現況の確認が1点。
公共図書館では、許諾を取って行っており、さらに視覚障害者以外の利用を可能できる許諾の取り方をしている、 そのような実績がある。その2つを分けて考えたい。

尾崎:
許諾を得る際の権利者側の具体的な反応についてもお教えいただきたい。

河村:
少し古いものであるが、許諾までの時間、許諾を得られた率について資料があるので提示したい。
次に、各省庁の組織再編成が進行していると思うが、著作権審議会そのものが改組され、 さらに大きな審議会に含まれるという話を聞いている。 また審議会に私どもの代表委員を含めてほしいという要望もお出ししているので、 改組後の組織の性格付け等について、お分かりの点があれば見通し等をおうかがいしたい。 当方の質問事項の整理のためにも。

吉田:
12年をもって廃止。13年1月から文化審議会が発足され、その中に吸収される。基本的に、現著作権審議会の機能はすべて文化審議会に移行吸収されると理解している。30名。文化財審議会に、著作権、国語審議会を入れ、さらに文化政策全般を検討する文化政策推進会議の機能を加え、4つ分の審議会がまとまることになる。組織構成の詳細についてはまだ分からない。文化審議会の中にさらに分科会ができる形であろう。
設置自体は、文部科学省設置法で決められている。

岸本:
今後政令により詳細が決められるが、現時点では分からない。

吉田:
政令なので、閣議が必要である。大蔵や総務に対して組織改正の要望を出し、審議を受けているところである。

坂上:
障害者基本法では審議会に当事者を委員の中にいれなければならないとしている。
私達の人権に密接に関わりのある著作権審議会には当事者をいれてしかるべきではないか。

吉田:
未だ文化審議会がどのような形になるかわからないので、今はそのような要望があったことだけ受け止めていきたい。

河村:
来年4月からの予算要求では、その予算は入るのであるか。

吉田:
そのとおりです。

河村:
来年の3月までに、その政令がでることになるのか。

吉田:
まだ決まっていない。

河村:
著作権課がその著作権部分の分科会の担当となるのか。

吉田:
そのとおりである。

河村:
その他何かあるか

太田:
プレゼンの機材について

塚本:
塚本と池野である。

河村:
事務局同士で緊密にやる。会場はそちらでご準備いただく形か

吉田:
基本はそうである。現場でやったほうがよければその都度考えたい。

河村:
現場や別の場所での協議が適切であれば、それも提案していきたい。

吉田:
細かい話になるが、画面を音声出力するパソコンというのが、8月中の産経新聞にあったが、どのようなものか。ヨメールという名前であったが

田中:
OCRで文字を読み込み、それを合成音声で呼んでいくというものである。一番問題なのは、漢字の読み方であり、なかなか十分にできない。このような場の資料も、前もってワープロやメールでお送りいただければ読むことができる。正確な読みは期待できないが、資料など、内容が分かればいいというものであれば十分対応できる。

河村:
今この場ではデモできないが、次回には、いくつかの実例を紹介したい。今の問題で特に重要なのは、中間に何かを固定したという中間生成物の問題である。著作権法では、何かに固定する際に、複製権などの問題がでると思うが、中間をブラックボックスとして無視できればいいのであるが、実はハードディスクにテキストを蓄えているのである。それが複製として捕らえられてしまう可能性がある。しかし私どもの立場は、それでだめだといわれても困るというものである。寝た子を起こすようなことになっては困るが、そのような手段の詳細と、そこから考える利用者側の利益について、積極的に問題点を提示して議論を進めていきたいと考えている。

坂上:
手話がついたテレビやビデオを見たことがあるか、なければ持ってこようと思ったが。

尾崎:
先ほどの話は、メモリー内に一時的に保存して無くしてしまうのか、固定ディスクにいったん落として、それを2次利用ができるのかで、取り扱いが変わってくる。

河村:
実物をお見せしながら議論したほうがいいと思うが、実は操作している者には分からずに保存されている場合もあるのである。キャッシュデータなど、そういう仕組みのものが沢山あり、知らない人は知らないが、知っていることは知っているというレベルである。そのような細かい議論は厭わないが、基本的な態度としては、必要なものであれば、それは認めていただくことで決着したいと考えている。それが国際的動向でもある。

太田:
字幕RTの現状であるが、リアルタイムでの字幕の取り組みについて、どの程度の知識、認識をお持ちであるか。

吉田:
実物は以前お見せいただいたし、新聞でも読んだ。脚本家連盟とのやりとりも知っている。

太田:
利用の仕方の詳細について知りたいというご要望であるのか。

吉田:
仮に法律上の措置をするのであれば、利用者の限定をしなければならない。利用の主体、複製の主体が区別できるのであるか、やろうと思えば誰でも出来るのか知りたい。どのような手段で受益されているのか、一連の人間の動きについて知りたい。
またその文字情報が、どのように保存されているのか。
入力者が、著作物利用の主体と捕らえられるが、そこには一定の組織があるのかということである。

尾崎:
テレビで話されていることが、どの程度修正、要約等されているのか。実際の音声と字幕の実物を見せていただければありがたい。

河村:
デモには許可がいるのではないか。

太田:
こういう場なので、見本として対応できるのではないか。

尾崎:
テレビを見ながら、その場で確認できるのか。であれば、有線送信にも公衆送信にも該当しないが。

河村:
それだと要約筆記と変わらない。

太田:
ある特定の番組を見たいということと理解した。システムを見たいということであれば、電話線、PHSを通じてデモすることもできる。例えばワールドカップのビデオがあるので、スポーツ中継の実例として、例を限定してお見せしたほうがいいと思う。

河村:
その際、会場の設備についてはご相談したい。

塚本:
脚本家連盟、シナ作などは、RTの実物を見たことはあるのか。

太田:
ニフティの中に、連盟の会員がいて、その実物をみてクレームがあったのである。

河村:
それでは先ほどの確認のとおり、まず文書回答して、次回に話し合いを持ちたい。


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