1999年12月9日
障害者放送協議会放送研究委員会
障害に関わる中央17団体で構成する障害者放送協議会の放送研究委員会(以下、当委員会)は、障害者の情報アクセスに関わる著作権法の諸問題について、様々な障害分野の要求を集約した要望書を文部大臣と著作権審議会会長とに提出し、本年6月以来、文化庁と協議を進めてきた。当委員会は著作権を尊重すると共に、障害者の知る権利と著作権の調和ある発展を追及している。
今回発表された著作権審議会第一小委員会『審議のまとめ』は、著作物を鑑賞し享受する権利が障害者と高齢者を含むすべての人にあることをはじめて明確にした点で画期的である。当委員会は、視聴覚障害をはじめとする身体障害、学習障害や知的障害、あるいは高齢による複合的な問題等、著作権法の整備なくしては解決できない障害者の情報アクセスに関わる諸問題をそれぞれ取り上げて問題提起し、法改正と障害を持つ当事者の代表を著作権審議会委員に含めることを要求し協議を続けてきた。このたびの『審議のまとめ』は、この協議における問題提起を受けて、早急に法改正が必要な問題と今後引き続き関係者の協議に委ねるべき課題とに整理している。
当委員会は、『審議のまとめ』が、「聴覚障害者のための放送番組等の字幕又は手話によるリアルタイム送信」(リアルタイム字幕等)と、「点字データのコンピュータへの蓄積及びコンピュータネットワークを通じた送信」とを、必要性と緊急性が高く権利者の利益を不当に害するものではないとして法改正に向けて一歩踏み込む姿勢を示していることを高く評価する。
もちろん残された課題は多々あるが、今回の『審議のまとめ』は、わが国の著作権行政が、初めて障害者の知る権利と著作権の調和ある発展を求めて動き出す転換点にさしかかっていることを示すものである。半年という短時日の間ではあるが、全国の障害関係団体と与野党文教委員の諸先生方のご支援を得て当委員会が提示してきた要求と提案を、終始真摯な姿勢で受けとめて今回の『審議のまとめ』を結実させた関係者の粘り強い努力に敬意を表すると共に、この『審議のまとめ』の趣旨に沿った法改正を次期通常国会で是非実現するように改めて文部大臣、政府および国会に強く要請するものである。