2000年3月15日
今回国会に上程された『著作権法及び万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律の一部を改正する法律案』は、著作物を鑑賞し享受する権利が障害者と高齢者を含むすべての人にあることをはじめて積極的に明確にした1999年12月の著作権審議会第一小委員会による『審議のまとめ』を受け、今後の著作権の発展の中で障害者の情報アクセス権を確保する道を具体化している点で高く評価できるものである。
当委員会は、視聴覚障害をはじめとする身体障害、情報の認知に障害のある学習障害や知的障害、あるいは高齢による複合的な障害等、著作権法の整備なくしては解決できない障害者の情報アクセスに関わる諸問題をそれぞれ取り上げて問題提起し、法改正と障害を持つ当事者の代表を著作権審議会委員に含めることを要求し協議を続けてきた。
このたびの法案には、必要性と緊急性が高い「聴覚障害者のための放送番組等の字幕によるリアルタイム送信」(リアルタイム字幕)と「点字データのコンピュータへの蓄積及びコンピュータネットワークを通じた送信」とを円滑に行えるように著作権法を整備する内容を含んでいるが、これは昨年来の協議において当協議会が代表して訴えてきた障害者・高齢者が当面する切実な情報アクセス問題に対する政府の真摯な対応の第一歩として高く評価したい。
今後の検討に委ねられる課題も数多くあり、国会で「障害者の知る権利と著作権の調和ある発展」が十分に審議され、速やかな改正法の実施とともに、障害者・高齢者が直面する情報アクセス問題についての権利者を含めた幅広い共通理解が深められることを強く望むものである。
短時日の間に、全国の障害関係団体と与野党文教(科学)委員の諸先生方のご理解とご支援を得て当委員会が提示してきた要求と提案を、終始真摯な姿勢で受けとめて法案を結実させた関係者の粘り強い努力に敬意を表すると共に、国会における速やかな承認を実現するよう改めて関係各位に強く要請するものである。
障害に関わる中央17団体で構成する障害者放送協議会の放送研究委員会(以下、当委員会)は、障害者の情報アクセスに関わる著作権法の諸問題について、様々な障害分野の要求を集約した要望書を文部大臣と著作権審議会会長とに提出し、1999年6月以来、文化庁と協議を進めてきた。この協議の中で、当委員会は、著作権を尊重することを前提に、障害者の知る権利と著作権の調和ある発展を追求している。