日時:
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平成17年7月21日(木) 午前10時00分より
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場所:
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戸山サンライズ 2階中会議室
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参加者(順不同):
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常世田良(文部科学省・文化審議会著作権分科会員)、
山地克郎(文部科学省・法制問題小委員会委員)、
三田誠広(日本文藝家協会)、
松本美信(電子情報技術産業協会(JEITA))、
太佐種一(JEITA)
井上芳郎(LD親の会)、
梅田ひろみ(全視情協)、
川畑順洋(日盲連)、
藤澤敏孝(就労センター)、
川越利信(JBS)、
川井節夫(全難聴)、
田中徹二(日盲社協)、
河村宏(専門委員)、
片石修三(リハ協)、
野村美佐子(リハ協)、
原田潔(リハ協)、
小林知弘(リハ協) |
議事
- 障害者放送協議会と今次提出の要望書について
- 各団体より活動状況等、報告
- 意見、情報交換等
資料
- 障害者放送協議会資料
- 障害者福祉関係の権利制限について
(文化審議会著作権分科会 法制問題小委員会資料)
- 著作権法改正に関する要望書等(平成16年12月8日著作権委員会資料)
- 3-1 著作権法改正に関する要望事項(日本図書館協会)
- 3-2 著作権法改正に関する要望事項(JEITA)
- 3-3 著作権法改正に関する要望事項(障害者放送協議会)
- 3-4 障害者用音訳資料利用ガイドラインについて
参考資料
軽度の障害を持つ生徒における音声テキストによる中等課程の内容の習得効果
協議のまとめ
障害者放送協議会と今次提出の要望書について
井上委員長より、障害者放送協議会・著作権委員会と、今次、文化庁に提出した「著作権法改正に関する要望事項」について説明された。
各団体より活動状況等、報告
- 日本盲人会連合より
日経新聞の夕刊と日盲連独自のニュースを加え、その内容を点字に直し、全国に配布する事業を行っている。その際に、著作権の問題は非常に神経を使う。
- 日本盲人社会福祉施設協議会より
当初は視覚障害者に対し、録音図書データをインターネットで送信することが問題であったが、著作権法改正で解決しつつある。しかし、他の障害者や高齢者に対してもサービスを広げていくことができればと考えている。
- 視覚障害者文化振興協会(JBS)より
視覚障害者向けのラジオ放送では著作権の問題があり、放送しにくい。有料で著作権の問題を処理しているが、それでは限界がある。オーストラリア、アメリカ等の諸外国では、音声新聞をラジオで届ける等、マイノリティに対する情報サービスは、著作権的には認められており、日本もそういう方向に進むべきと考えており、ご協力頂きたい。
- 全国視覚障害者情報提供施設協会より(日本点字図書館所属委員)
- 著作権法30条に絡めて、欠格条項の撤廃により門戸が開かれつつある障害者の就労支援、資格試験への挑戦を学習面でサポートするために「貸出」に限定しない音声化等の媒体変換が求められている。法制問題小委員会内でも、すでに私的複製として理解されているような発言があったが、点字図書館等の施設が、プライバシーにも責任を持って業務として行える必要がある。
- サービスの現場には、視覚以外の障害によって活字を読むことの困難な人が、録音図書の利用を希望してこられる。お断りしなければならずつらいという声も聞かれる。また、点字図書館と公共図書館は協力しながら視覚障害者へのサービスを行なっているが、著作権法上の扱いが異なることによる問題もある。視覚障害者に限定した録音、公共図書館を外した製作施設の限定を改めてほしいと思っている。
- 全日本難聴者・中途失聴者団体連合会より
聴覚障害者の場合は、著作権37条2項(聴覚障害者のための自動公衆送信)によって、非常に助かっている。しかし、放送番組の多くは、著作権のため字幕・手話が付与できないので、聴覚障害者情報提供施設、また福祉の増進を目的とした事業に行っている所では、無許可でそれらを付与できることを37条に追加して頂きたいという要望をしていきたい。
- 全国LD親の会より
学習障害者(LD)は多領域にわたるものなので、各人のニーズにあった教科書を用意することが望まれる。直接著作権というよりは、学校教育の問題かもしてないが、現在では著作権法の権利制限として対処している。
- 電子情報技術産業協会(JEITA)より
現在JEITAでは、私的録音・録画補償金の見直しを中心に取り組んでいる。
- ソフトウェア情報センターより
著作権法改正については、たくさんの要望があるので、実現にはアピールが必要。ただ要望をするだけでは利害の対立になってしまうので、権利者のことも考慮した手段を同時に検討すべきである。また、アメリカなどではフェアユースを実践しており、日本でもやるべきであるという意見もあるが、はたして日本の文化、習慣に合うのか、また実践するには、利用者と権利者の綿密な話し合いが不可欠ではないかと考えている。
- 日本図書館協会より
公共図書館は、ハンディ持った市民に対してのサービスを積極的にやっているところと、そうでないところの差がある。各自治体の教育委員会の方針に沿った枠内でしか動けないのが現状である。協会は、そういう差がないように働きかけているという構図である。
障害者は、障害のない人と同様の情報を得る権利があるが、著作権上の問題により、基本的には媒体の変換が問題になっている。公共図書館の場合は、1件ずつ許諾をとっているが、許諾なしで媒体変換をできるよう、要望している。文芸書については、一括許諾という方法があり、媒体変化がスムーズになってきている。
- 日本文藝家協会より
著作権の権利制限拡大には、利用者と権利者の話し合いによって、様々な問題を回避するガイドラインを作ることで、双方の理解を得られるのではないかと考える。そうした実績を残していくことが大切である。
また、教育関係では、予備校や私立学校との間に協定を結ぶ、保証金制度を今年度より始めた。この制度がうまくいけば、権利制限の拡大にも対処し易く、将来的にはフェアユースの実現に向うのではないかと考えている。
- 日本障害者リハビリテーション協会、情報センターの野村氏より、DAISY(アクセシブルなデジタル情報システム)の実演説明があった。
意見、情報交換等
- 音訳ボランティアについて、現状は、点字図書館や公共図書館のような公のものにしか対応できていない。音訳ボランティアの全国組織のようなものがあれば、そこに加盟しているボランティア団体には、一括許諾を出すという形が考えられるのではないかという意見が出た。
- DAISY等を利用することで、便利になればなるほど、新たな著作権の問題が生じてくる。権利者が、複製権と複製の譲渡権を出版社に委ねている現状から、今後は出版社も交え、どういう形で話し合うかが課題になるのではないかという意見が出た。
- アメリカでは最初から録音したものと印刷したものの両方を売っている。印刷したものを読めない人がおり、その人たちもマーケットととらえ、皆が享受できるという文化を育てることが大切ではないかという意見が出た。
- 著作権に関して、教育分野を別に考えられないのかという意見が出たが、「教育」と言っても「生涯教育」など幅広くなり、その範囲が問題になるのではないか。また、常に権利者側が犠牲にならなければならないのかとの議論も出てくるだろうという意見が出た。
- 障害者のための媒体変換には、労力と費用がかかっている。著作物が出る際に、障害者にも配慮されていれば問題は生じないのではないかという意見が出た。
- 権利者と利用者の利益は相反するものでなく、工夫の仕方で進歩するものではないかという意見が出た。
*次回委員会については、後日日程調整を行うこととする。
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